【種を蒔け】
[伝道者の書(コヘレトの言葉)を読む;第11章]      牧師  熊谷徹
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【T】パンを投げよ(11章1〜2節)
 「あなたのパンを水の上に投げよ」(1)。この有名な聖句は幾通りかに解
釈される。代表的な解釈は、海外貿易への投資に関するものと解するもので
ある。即ち、品物を船に乗せて海に漕ぎ出せ、そうすれば利益が得られるで
あろう、という意味に解する。この場合2節は、「卵を全部一つのかごに入
れるな」と同種類の教えと解される。もう一つの解釈は、「パン」を善意や
親切の象徴ととらえて、愛と善行の勧めと解するものである。この場合2節
は、たとえ徒労に思えても黙々と善を行え、そうすれば、あなたの知らない
所で助かる人も出てくる、また、あなた自身も思いもかけぬ時に助けられる
だろう、との意味になる。次の3〜6節とのつながりからすれば前者の方が
自然であるが、ユダヤ人の伝統的解釈である後者にも味わい深いものがある。

【U】種を蒔け(3〜6節)
 風や雲の動きを人はどうすることもできない。胎児のことも風の道と同様、
人には分からない。分かっているのはただ、風が吹いているということ、胎
児が生きているということ、そして、それら「いっさいを行われる」のは神
なのだということだけである。その神を信じ、結果を神に委ねて「あなたの
種を蒔け」、即ち、なすべき務めを果たせ、と伝道者は言う。

【V】若さと青春(7〜10節)
 「快い」はずの人生にも「やみの日」は沢山ある。その究極に位置するの
が死である。死への行進とも言うべき人生においては、「起こることはみな、
むなしい」(7−8)。次に伝道者は若者に向けて語る。若いうちに人生を
楽しむが良い、しかし「神のさばき」があることを知っておけ、「若さも青
春もむなしい」ことを忘れるな、と(9−10)。

【考えよう】
 あなたがあなたの畑(人生、心、世界)に蒔くべき「種」は何だろう。カ
ール・ヒルティは言った;「あなたは絶えず、そしてできるだけ多く、愛の
種を蒔かねばならない。・・・それがあなたの生涯の仕事である」。


                     −茅ヶ崎同盟教会月報 2004年10月号より−