【創造者を覚えよ】
[伝道者の書(コヘレトの言葉)を読む;第12章]      牧師  熊谷徹
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 伝道者はいよいよ神への信仰へと読者を導いて行く。死への行進を続ける
私達に(12:2−8)、創造者なる神を覚えよ(1節)、神を恐れつつ人生を歩め
(9−14節)と勧める。

【1】創造者を知れ(12章1節)
 伝道者は、「日の下」における神なき人生の空しさを語って来たが、今こ
こに、「空の空」を解決する道を明らかにする。伝道者は言う、「あなたの
若い日に、あなたの創造者を覚えよ」と。「初めに・・・天と地を創造した」偉
大な神(創世記1:1)が、「あなたの」創造者なのである。この事実に目覚め
る時、それまでとは全く異なった人生観が開かれて来る。「空の空」ではな
い、豊かな人生を見いだすようになる。

【U】永遠への備えを(1−8節)
神なき青春を「空」とすれば(11:10)、神なき老年は「惨め」である。伝
道者はそれを、「わざわいの日、何の喜びもない年月」と表現する(1−2節)。
3節以下は、老いて死んで行く人間の悲しい現実を詩的・象徴的表現を用い
て描いたものである。5節の「永遠の家」とは墓のことで、6節は死の瞬間
を詩的に描いたものである。老いの行き着く先は死である。死んで、「ちり
はもとあった地に帰る」というだけの人生では、あまりにも空しい。「空の
空。伝道者は言う。すべては空」。

【U】エピローグ(9−14節)
 著者紹介、編集方針、本書の特色、結論が記される。伝道者が語り続けて
来た「空の空」という「日の下」の生は、「結局のところ」、人間が「神を
恐れ」ず、「神の命令を守」らず、神なき世界に生きているからなのである。
「空の空」ではない人生は、いのちの創造者である神を覚え、神を信じるこ
とによって与えられる。この最も根本的なことを否定して生きるとき、人間
の生は「空の空」となる。

【感謝しよう】キリストが死を打ち破って下さったことを。そして、この世
の空しい生き方から贖い出して下きったことを(第一ぺテロ1:18−19)。

                     −茅ヶ崎同盟教会月報 2004年11月号より−