【神を愛し人を愛せよ】(マタイの福音書22章34〜40節)
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                              牧師 熊谷徹

 
西郷隆盛の晩年の座右の銘は「敬天愛人」だったことは広く知られていますが、幕末に英国留学から帰った中村宇(正直)が「天愛人説」についてこう書いています;「何をか愛人という、曰く、天をするがゆえに人を愛す。わが同胞を愛するは、わが父をするによる」と。宇は後にクリスチャンになり明治天皇に是非洗礼を受けるようにと進言したそうです。

 キリストは、律法学者から「最も重要な律法は何か」と問われてこう答えられました;「心を尽くし、思いを尽くし、知力を尽くして、あなたの神である主を愛せよ。これが大切な第一の戒めです」(マタイ22 : 37-38)。この御言葉についてマザー・テレサは、「神を愛することが私達のうちに愛が生まれる根源であり、神を愛することは、誰でも願いさえするなら出来るのです」と言っています。
 
 次にキリストはこうおっしゃいました;「あなたの隣人をあなた自身のように愛せよ、という第二の戒めもそれと同じように大切です」(マタイ22 : 39)。人が「自分を愛する」根拠は、単なる自己愛や自分可愛さからではなく、神が私達をご自身のかたちに創造して下さったから(創世1:26);ご自身の血をもって私達を買い取って下さったから(使徒20 : 28);実にその独り子をお与えになった程に私達を愛して下さったから(ョハネ3:16);永遠に変わらぬ愛をもって愛して下さったから(イザヤ54:8)です。「他の人を愛する」根拠もそれと全く同じです。私達は自分を愛するように人を愛すべきです。

 最後に主イエスは、「律法全体と預言者とが、この二つの戒めにかかっているのです」とおっしやいました(40節)。律法の全ては「神を愛し人を愛せよ!」という「愛の戒め」に集約されるのです。

               
    −茅ヶ崎同盟教会月報 2006年9月号より−