●「かつてあったいいことは,どこかで生きつづける」。
児童文学者の石井桃子さんが,米国の児童図書館員から聞いた言葉です。かつて訪れた児童図書館を再訪した折,その図書館が時代の趨勢に従って変容していくのを見て,その行く末を案じた石井さんが当時の同僚に問いかけた時に返ってきた言葉だそうです。
●これまで保ってきたこと,今あることが,常に正解で,すべての人が保つべき形であるとは言えません。
時が流れ,人が代わり,時代が移る中で,変化は絶えず起こります。慣れ親しんできたものが失われてしまうと思えるような時もあるでしょう。けれども「かつてのよきことは,今もどこかで生きつづけている」と信じることができれば幸いです。
●聖書の預言者は「草はしおれ,花は散る」と言いました。「しおれ・散る」変化の現実を見つめながら,人の世の無常を嘆いているわけでも,諦めを説いているのでもありません。重要なのは「しかし」という対比です。決して変わらないものへの「前向きの信頼」をそこに伝えようとしています。
●「神のことぱは永遠に立つ」という確固たる信頼があるとき,人は変化の中でも望みをもって生きることができるのではないでしょうか。聖書のことぱに生きるとき,たとえ形は変わっても,かつてのよきことが生きていると信じることができるし,これから後のよきことにも望みを抱いて前進することができるのです。
神さまの祝福がありますように。
牧師 山村諭