Nature Research
注目の最新論文
 
Research Picksでは、近年創刊したネイチャー・ポートフォリオの出版誌に出版された最新の論文の中から、世界的に話題となった論文や日本からの論文をご紹介します。毎号、掲載されるジャーナルは様々です。
 
Nature Aging
© Chris Madden / Moment / Getty. Cover design: Lauren Heslop.
 
Letter | 03 May 2021
退役軍人省の規範的加齢研究における大気汚染への短期曝露、認知能力および非ステロイド性抗炎症薬の使用
退役軍人省の規範的加齢研究の高齢男性のコホートにおいて、危険レベル未満の微粒子状物質(PM2.5)に対するわずか数週間の曝露が、高齢者の認知機能を阻害することが明らかになった。しかし、非ステロイド性抗炎症薬を服用している人では、この有害な作用の軽減が見られた。
 
 
Resource | 14 May 2021
大規模な血漿プロテオミクス解析による、認知症リスクに関連したタンパク質と経路の特定
Walkerたちは、認知症でない高齢者において、将来的な認知症リスクと関連する38の候補タンパク質を特定したプロテオーム規模関連解析について報告する。これらのタンパク質の経路解析では、認知症の発症には免疫、脂質、代謝シグナル伝達、止血の経路が関与していることが明らかになった。
 
Nature Computational Science
 
Article | 20 May 2021
希少な細胞集団の検出を目的とした単一細胞多様体保存的特徴選択法
非冗長な特徴を選択することで希少な細胞集団の検出、追跡研究の設計および標的パネルの作成に役立つ、単一細胞データ解析のための多様体保存的特徴選択法を開発した。
 
Perspective | 24 May 2021
デジタルツインを職人技から産業へとスケールアップする
幅広い産業分野や研究分野でデジタルツイン技術の開発が急速に進んでいる。しかし、このような技術が、より広く、より着実に.採用されるためには、計算科学コミュニティーがさまざまな課題に取り組んでゆく必要がある。
 
Nature Cancer
 
Article | 03 May 2021
好中球の酸化ストレスは肥満に関連した血管機能障害と転移性移動を仲介する
Quailたちは、好中球由来の活性酸素種(ROS)と好中球細胞外トラップ(NET)は、内皮の接合部接着を変化させることで乳がんの肺への転移を仲介し、血管の透過性とがん細胞の経内皮移動を促すことを示している。
Nature Food
 
Perspective | 13 May 2021
リスクに対する回復力のある食生活をもたらす未来食
従来の農業システムはさまざまなストレス源の影響を受けやすいが、微細藻類、マイコプロテイン、ミールワームは健康的でより持続可能性が高い食事を提供できる。今回の研究は、未来食の農業システムを回復力のあるものにしているのは何か、また、その可能性をどのようにして引き出すのかを明らかにしている。
 
Article | 20 May 2021
花粉から着想した酵素封入微小粒子で飼育下の花粉媒介生物での有機リン系殺虫剤の毒性を軽減させる
有機リン系殺虫剤は、花粉媒介生物に対して強い毒性をもつ。花粉から着想した微小粒子にホスホトリエステラーゼを封入したものを与えたマルハナバチは、有機リン系殺虫剤で汚染された花粉パティを与えた後でも生存率が100%だった。
 
Nature Metabolism
 
Article | 05 April 2021
ショウジョウバエのwhite遺伝子は老化の際に腸幹細胞の増殖恒常性を調節する
ショウジョウバエ(Drosophila)のwhite変異体は遺伝学的研究に広く用いられている。関西学院大学および理化学研究所生命機能科学研究センターの佐々木たちは、white遺伝子の代謝の役割が、老化の際の葉酸の代謝を介した腸幹細胞の増殖調節であることを示している。
Nature Communications
 
Article | 18 May 2021 | Open Access
人類起源の気候変動により生じた海水面上昇が原因のハリケーン・サンディの経済的被害
海水面上昇は沿岸への嵐の影響を増幅するが、人類起源の気候変動の役割はよくわかっていない。本論文で、著者らは力学的洪水モデルを用いてハリケーン・サンディの影響を再評価し、人類起源の海水面上昇は中心部で80億ドルの被害見積を付加したことを示している。
 
 
Article | 25 May 2021 | Open Access
米国主要都市における都市ヒートアイランド強度に対する曝露の不均衡
個々人の高温への曝露は、健康や経済効果への悪影響と関連がある。著者たちは今回、米国本土のほぼ全ての主要都市で、有色人種や貧困層は、都市熱環境に対して不釣り合いに大きな負荷を受けていること示している。
 
Communications Materials
 
Article | 24 May 2021 | Open Access
高速in-situ X線散乱によって明らかになった石膏脱水反応速度の応力感受性
石膏の脱水を理解することは、流体に起因する地震や、建設業での石膏利用に重要である。本論文では、小さな弾性荷重が脱水反応速度を大幅に加速させ、加熱よりもはるかに効果的であることがX線散乱によって明らかになっている。
 
 
 
Article | 14 May 2021 | Open Access
層状極性ディラック金属における調整可能なスピン・バレー結合
非中心対称性結晶におけるスピン・軌道結合は、興味深いフェルミ面のスピン・運動量ロックを引き起こす。本論文では、極性金属BaMnX2 (X = Bi, Sb)の電子構造から、Xサブ格子歪みに対する高い敏感性が、化学的に調整可能なディラックフェルミオンのスピン・バレー結合につながることが明らかになっている。
 
Communications Earth & Environment
 
Article | 21 May 2021 | Open Access
ヨーロッパの淡水腹足類の現在の絶滅率は白亜紀後期大量絶滅よりもはるかに大きい
白亜紀後期大量絶滅におけるヨーロッパの淡水腹足類の絶滅率はこれまで過小評価されていたが、それでも現在の割合より低かったと、化石の記録と現在の生物多様性を比較した結果が示している。
 
 
Article | 18 May 2021 | Open Access
衝突は小惑星母天体上で水の変成と固体有機物を形成させる熱を提供する
小惑星の母天体の衝突加熱は、衝突クレーター底の下で水の変成をもたらし、固体有機物質を生成させるために十分な可能性があると、二段式軽ガス銃を用いた直接的な実験が示している。
 
Communications Chemistry
 
Article | 14 May 2021 | Open Access
ToF-SIMSを用いたナノグラム量のグリコサミノグリカンの高感度分析
グリコサミノグリカンは、重要な種類の炭水化物であるが、分析上の大きな課題がある。本論文では、ToF-SIMSと多変量解析を併用することで、さまざまな動物に由来するヘパリン試料が0.001 wt%という感度で識別されるなど、6種類のグリコサミノグリカンが識別されている。
 
 
Article | 21 May 2021 | Open Access
三次元構造を有する芳香族分子のカーボン化によるオングストロームレベルで細孔が制御されたカーボン材料の創製
多孔性材料は、触媒反応、電気化学、吸着剤などに広く用いられているが、細孔サイズの制御が合成上の課題であり続けている。本論文では、カーボン原料の3D分子構造によって、生成するカーボン材料の細孔サイズをオングストロームレベルで制御できることが示されている。
 
 
 
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レポート「学際的研究を超えたその先へ ― SDGs達成に向けて ―
2021年3月26日、東京大学未来ビジョン研究センターとシュプリンガー・ネイチャーの共同で「SDGsシンポジウム2021:学際的科学から解決策を考える食料、水、気候、生態系の持続可能な開発目標」がオンラインで開催されました。 シンポジウムは、基調講演・研究発表・パネルディスカッションで構成され、SDGs(持続可能な開発目標)達成に向けて意義深い意見が交わされる貴重な機会となりました。 レポートはこちら